完成
【6月30日(土)建具の取り付け】
- 玄関引き戸
- 白壁塗装工事
昨日、新しく造った玄関の建具がようやく製作会社から送られてきて、ほの暗い部屋の隅に立て掛けられている。
この家に使用されている建具は、基本的に他の民家で使用していた建具を手直しして使っているので、木は古色とした風情がある。特に外壁の2階開口部に使用されている建具は、古さを越え、一部は風雨で劣化している部分もあった。従来の建物外部の木部は弁ガラで塗装されているので、陽に焼け、劣化した建具も弁ガラを塗ることによりなんとか形になり納まっているのである。今までそのような建具を見慣れているので、真新しい建具が届き、混乱した現場の片隅に置かれていると、乳白色の白木に一種艶めかしさを感じるほどである。
「この白木に色を塗るのは少し惜しい気がするね。」
私と同様のことを考えていたらしい現場監督の中西君もうなずきながら
「それでも白木のままだと目を剥きますよ。」
と現場の人間らしい表現で言った。
真壁の柱に弁ガラを塗った建物に、玄関引き戸だけ白木で納める気持ちはないけれど、ただ白木自体の美しさが、年代を経た建物のなかで一際目立ったのでそのように言ってみただけである。
「私は弁ガラを塗るより、白木の模様を浮きだたせる薄墨色が良いと思うのですが。」
中西君の説明に私も頷かざるを得なかった。
建物全体の、白壁と弁ガラ塗りの木部のコントラストから考えると、玄関引き戸は当然白木ではなく、着色するべきである。しかし、弁ガラにすると重みが有りすぎ、全体のバランスを考えると薄墨色で色調を合わせた方が良いと思える。
彼との話はこのあたりで納まったが、実際この民家が完成した暁には再生に興味のある人々が民家の完成度を見に来る。その時に、新たに造った玄関の引き戸や木枠の窓に着色された薄墨色の建具を見てどのように反応するのか、それが不安でした。
さらに完成間際に気が付いたことですが、この建物は異常に開口部が多い。本来は、もう少し白壁の部分があっても良いのだが、元々が旅館から柴漬け販売の店舗になった建物だから異様に窓が多い造りになっている。
再生当初、窓が多いことは図面では気にならなかったが、完成に近づくにつれて特に開口部の多さが気になり始めた。
この建物は完成後、日を見て関係者の方に公開する予定だが、その時の批判が今から想像される。
【6月30日(土)建具の取り付け】
- 土間工事の様子
現場に近づくにつれ気が付いたのが、玄関の引き戸が薄墨色に着色されたことと建具にガラスが取り付けられたことでした。
道路側に面した窓や玄関引き戸には上部20センチほど透明な部分を残して曇りガラスで覆われていました。その姿が大原の里にとけ込んでいました。
民家の側に建っている蔵はほとんど改修を終えて、美しい白壁を夏の陽に輝かせていました。
民家の大工工事は、あと風呂場を残すだけでほとんど完了しています。1階の土間を叩きで仕上げるため、下地の土が敷かれ土間を固める工事に入っています。この土間工事は12日からかかる予定です。
- 少し窪んだ造りの池
- 池づくりの様子
- 完成した池
また、裏庭が整備されていました。
先日現場を訪ねた時、左官屋が池の石積みを丁寧に直していました。
池の底にあったコンクリートをすべて剥がして、替わりに新しいモルタルで池底を固めています。池の中程が少し窪んだ造りになっていて、理由を聞くと排水が取れなかったので、池の底に溜まった泥をポンプで吸い出すための窪みだということでした。
当初、現場監督の中西君は、池の石組みも含めて庭は浪速千栄子さんの屋敷にあった吉野石を使い、新たに作り直す予定だったということです。
~現場レポート終わり~
美しく生まれ変わった大原三千院民家です。
建物本来の骨組みや建材はそのままに、劣化した建材を取替え修復していく。
また、再利用できるのもは出来る限り活用。
ゼロの「家づくり」を考える上で重要なプロジェクトとなりました。
春と秋には期間限定でカフェを営業しております。
お気軽にお立ち寄りください。
木造建築の可能性 2001.1月 完成
大原三千院民家再生