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内部工事

【2月28日(土)】

大原三千院民家再生事業
建物内部の様子
大原三千院民家再生事業
大原三千院民家再生事業
大原三千院民家再生事業
大原三千院民家再生事業
大原三千院民家再生事業
着々と進む内部工事の様子

私は、現場でこまめに動いている大工や現場監督に、いつもの口調で挨拶を交わしながら建物内部に入り込んだ。

2週間前にこの現場を訪れたとき、内部の造作は手つかずだったが、今は1階居間の間仕切りや、トイレ、厨房の形が姿を現し始めている。建具が入ると室内の形が見えそうなところまで進んでいた。 工事はあと2ヶ月かかるということであった。
そんなに時間はかからないとは思うのだが、こと100年前の民家の改修であるから、小さなおさまりでも、判断に迷うと様々な人を呼び込んで議論をしながら工事を進行させる。その為、その位の時間を見た方が良いのかもしれない。

トイレになる壁の横に龍安寺の住居から持ってきた杉の板戸が置かれてあった。現場監督が嬉しそうにこの板戸をトイレに取り付ける話をする。南側の納戸の天井に元々から付いていた碍子を利用して電線を張るという。本来は軸組が見える天井にはすべてこの碍子を使い電線を張って貰いたかったのだが、容量との関係でそういう訳にもいかなくなった。

しかし、化粧がなされた軸組の天井は美しい。見ていて惚れ惚れするような居住まいの良さだ。日頃、建築の業に携わるものにしかこのような感じ方はないのかも知れない。

つい最近、釈迦谷にある住居を建売の用地として購入した。そこの建物に使用されている天井板が上質な杉板であった。このことを発見した現場監督が、大工を引き連れて天井から剥がし、大原の倉庫に運び込んだ。

「この杉板です」と言いながら、彼は幾分興奮した表情で続けた。
「新しく買えば坪15万円するのですよ、8坪分取り込む事が出来ました」。

坪15万円という価格がどの程度のものかわからないけれど、1階の和室2室分の天井がこの美しい文様の杉板で作られることを考えるだけで気持ちが高ぶった。

私は、龍安寺の住宅で取り込んだ杉の一枚板の板戸を思い出した。 この板戸は現在この倉庫の奥深くに眠っていて、いずれ玄関の上がり框のところに取り付けられる予定である。以前この板戸を発見したとき、あまりに重厚で美しいので、なんとしてでもこの板戸だけは押さえたいと思い、建具全体を買い付けるとすぐさま誰かに横取りされないように大原の倉庫に移したいわく付きの板戸であった。

私は倉庫の中に入り、何十枚も立てかけてある建具を捲りながら、最後に立てかけてあった板戸にたどり着くとまじまじと眺めた。板戸の様子は当初見たよりさらに重厚感があり、歴史の経過を表皮ににじませており、まことに存在感のある美しいものであった。いずれこの板戸が玄関の上がり框を飾るのかと思うとさらに胸が高鳴った。

【5月16日(水)1階和室天井造作工事】

大原三千院民家再生事業
美しい天井板
大原三千院民家再生事業
トイレのダクト

水曜日は会社の休みで、私は通常より1時間ほどベットで無為な時間を過ごしたあと、妻の用意してくれた朝食を取り、普段着のまま車で大原の現場に向かった。私は北山橋の袂付近に居住しており、そこからだと左京の清掃工場の前を通り、市原を抜け大原へのコースを取ると、20分くらいで現場に到着することが出来る。以前なら、大原というと人里はなれたところという印象が強かったが、自宅から車で20分の距離なのである。

10時頃現地に到着してみると、職人達は各持ち場で猛烈な勢いで稼働していた。1週間前に現場を訪れたばかりなので、一見したところ変わったところはないように見受けられたが、詳細に見ると様々な場所で工事は進捗していた。

特に、1階和室つづき間の天井が釈迦谷の茶室から持ってきた杉の天井板で美しく貼られていた。

「こんな幅の広い紋様の浮き出た杉板は、今はどのくらいするか分からない。」

大工は踏み台に足を乗せながら、杉板を次々所定の場所へ納め、釘で止めながらどもるようにそう言った。そう言われて改めて杉板を見ると、確かに従来の天井板に比べて幅は広く杉の紋様が美しく浮き出ていた。私は、商売柄お金の価値でものの価値を判断する悪い癖がある。この時も自分の悪い癖を思い出して聞くまいとしたのだが、口から先にその質問が飛び出していた。

「ところでその天井板、銘木屋で買えば幾らくらいするの?」

大工は怒ったような表情で答えた。

「坪30万円、全部で16畳だから200万円以上はするね」。

その答えで私は満足してしまった。この天井板は、先に述べたように建売住宅の用地として購入した釈迦谷の建物の中から外してきたものである。家の外見はぼろぼろだったけど、中は立派な建材が使用されており、この天井板もなかなかの数寄屋づくりの家でも見ることの出来ない代物であった。

日頃は張り合わせの合板ばかりを使って家づくりをしているから、久しぶりに目にする高級建材に心が浮き立ってしまうのである。それは私だけではなく、大工も同様だった。最近はめったにこのような杉の一枚板を使って天井を張るということがないので、誰もが興奮しているのである。

長く天井板を張る様子を眺めていたが、ふと通路の横に立てかけてある幅1m長さ4mほどの一枚板に気が付いた。それは、埃まみれになって地模様がわからないくらいだったが、手で擦ってみると欅らしき美しい紋様が浮き出てきた。その板の大きさは今まで見たこともなく、また巨大な1枚板だったので、思わず興奮して
「この地板どうしたんです?」
と聞くと、近くの大工が
「中西さんが持ってきたんです。なんでも等持院の家で見つけて、潰す前に半日掛けて外してきたといっていましたよ」。

等持院とは、この度取引が終わった建売用地で、ここにも古い民家が建っていた。現場監督の中西君は、等持院の民家を解体すると言うことで、わざわざ建物の中を見に行き、その時この地板を発見したのだろう。

「この地板をどうすると言っていた?」

「なんでも玄関の敷き台にするようですよ。」

なるほど玄関の敷き台なら欅の一枚板ならぴったりだ。玄関の間口は3mもある。これにあう敷き台はめったにみつからない。まして、幅が1mもある敷き台などほとんどないに等しい。せっかく4mもある敷き台を3mに切って使うのは勿体ない気がしたが仕方がない。一応タダなんだから。私は良い敷き台が、しかもタダで見つかったことに気をよくしながら、別の工事の場所を視察に行った。

  • 施工実例 大原三千院民家再生
  • 木造建築の可能性 2001.1月 完成

    大原三千院民家再生

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